福島の大事故 言及なし 被爆の危険性を覆い隠す
10月14日、文部科学省から放射線に関する教材用の副読本が公表されました。子どもや教師の不安に答えるものとなっているのか。今学ぶべきことは何なのか。埼玉県立小鹿野高校教員の関根一昭さん(平和・国際教育研究会会員)に書いてもらいました。
埼玉県立小鹿野高校教員 関根 一昭さん
副読本は小学校用、中学校用、高校用に分けられ、それぞれに教師用の解説書がついています。福島第1原発事故後、原発や放射線に関するあらたな教材が求められていました。しかし、今回の副読本は、現場の教師や、子ども、生徒に対する期待にこたえるものにはなっていません。
問題点をいくつかあげてみます。

放射線副読本(小学校)の表紙とその中身
汚染の現実は
原発や原発事故については、冒頭のはしがきに数行ふれられているのみです。レベル7の大事故を起こした原因、実態、地震と津波の影響など、まったく記述されていません。半年経過して、ますます深刻さを増している放射能汚染の現実についてもふれられていません。
学校で教材としてあつかうときに、福島第1原発事故に言及しないで展開することができるのでしょうか?文部科学省が作成したスピーディ(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)の放射能汚染図(図参照)などを掲載する手立てもあったでしょう。少なくとも福島の学校では使用できない副読本といわざるをえません。
放射線が人体にあたえる影響についての記述にも問題があります。100ミリシーベルト以下の被ばくには、「明確な証拠がない」ので、「被ばくのリスク」もないかのような表現になっています。
最近の低線量被ばくに関する研究や、内部被ばくに関する研究の進展を無視しています。がんの原因を他の原因と並列させて、放射線被ばくの危険性を覆い隠しているところもあります。

スピーディ(SPEEDIによる1歳児の甲状腺の内部被ばく量の試算(3月12日午前6時~3月24日午前0時までの積算値)
危険性述べず
福島第1原発事故で大量に放出され、子どもたちが気にかけている放射性ヨウ素や、放射性セシウムにもふれられていません。子どもたちの毎日の生活に欠かすことができない食の安全にもふれられていません。放射線の利用や、「安全性」はくり返し書かれていても、その危険性はほとんど述べられていません。
福島県をはじめ、隣接する都県の子どもたちが、放射線の脅威にさらされているとき、この副読本は実態に即したものとはいえません。
また、アメリカのスリーマイル島原発事故やウクライナ共和国のチェルノブイリ原発事故もとりあげられていません。過去の大事故の教訓から学ぶべきことはたくさんあります。少なくとも中学生、高校生には十分に教える必要があります。原発だけではなく、青森県六ケ所村の核燃料サイクル基地の問題、さらには使用済み核燃料の処理の問題もないがしろにすることはできません。
意見を聞かず
副読本とその解説書は、今月上旬から各学校に配布され、その数は合計8万部になります。副読本が作成された過程も問題です。福島第1原発事故を受けて、原発や放射線の問題は大きな課題になっています。いきなり「決定版」を学校に配布するのではなく、国民の意見、とりわけ現場の教師の意見を集約し、それを反映させた副読本でなければなりません。
児童生徒の疑問にこたえ、教師の要求に的確にこたえられる内容の副読本に改訂される必要があると考えます。
【副読本発行の背景】
文科省と経済産業省は2009年度から、原発は安全と書かれた小中学生向けの副読本『わくわく原子力ランド』等を発行。授業等で使われ始めていました。日本共産党の宮本岳志衆院議員は4月の文部科学委員会で「“安全神話”にたった副読本は使わせてはならない」と追及。高木義明前文科相は「見直していきたい」と答え、当該ホームページからも削除されました。今回の副読本はこの「見直し」の結果作られました。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年11月2日付掲載
福島原発事故をうけて、さすがに『わくわく原子力ランド』などのバラ色一色の副読本はひっこめざるをえなかったのでしょう。当然です。
でも、福島第一原発事故の事とか、放射性ヨウ素や放射性セシウムの危険性、その対処方法についても触れられていないといいます。
原子力を美化することを改めたことは認めたいと思いますが、実際の教育現場のニーズには合っていないのではないでしょうか・・・